地域資源としての寺社・教会

超高齢社会を迎えた我が国において、住み慣れた地域で、自分らしい人生をまっとうすることができる社会を作るため、厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築を推進している。このシステムの実効性を高めるには、医療、介護など専門職、専門機関との連携はさることながら、地域社会における支え合い、助け合いの場をどれだけ作れるかが重要になるだろう。厚労省の概念図には、本人の地域生活を支える生活支援や介護予防の担い手として、老人クラブ、自治会、ボランティア、NPO等の名前が挙げられているが、ここに長らく地域とともに生きてきた寺社・教会等も加われるのではないかとにらんでいる。
私の所属する大正大学地域構想研究所BSR推進センターは、「仏教者の社会的責任」をテーマに、日本各地に存在する仏教寺院を、文化、教育、福祉における地域資源とみなし、その潜在的役割の見える化をめざしている。これまで、さまざまな寺院の地域活動を取材、調査する中で、地域の見守りや助け合いの場になっている事例も数多くあることが明らかになっている。直接、地域活動を運営していなくても、寺院という場をNPOや任意団体に貸し出している場合もある。これもまた、地域活動を下支えする資源の活用方法といえるだろう。しかし、寺社・教会等の宗教施設を地域資源としてとらえる見方はまだ一般的とはいえない。
高齢者のみならず、生活課題や生きづらさを抱えた人が暮らしやすくなるために、地域には、気軽に立ち寄れる「集いの場」が必要である。集いの場は、やがて、支え合いや、助け合いの場ともなるが、そのような互助機能を十分に発揮するには、集いの場自体が、①誰にとっても安心・安全な場〈無条件の承認〉、②つぶやきやSOSのサインが支援につながる場〈専門機関との連携〉、③支援の受け手・支え手に二分されない関係性を持てる場〈役割の付与〉、④地域に開かれ、社会と接続していることへの実感を得られる場〈地域との共生〉であることがポイントとなるだろう。
とりわけ寺院は地域社会に根差した地域資源であり、多様な人が出入りする空間でもある。よって、〈地域との共生〉を感じやすい「集いの場」になる可能性を十分秘めている。専門職や専門機関との連携によって、この潜在的な地域資源が顕在化し、多くの人の生きづらさが緩和される社会が到来することを期待している。

大正大学社会共生学部/地域構想研究所BSR推進センター
専任講師
髙瀨顕功

pagetop

戻る

WHO自殺を予防す